開場一周年にあたり

一般社団法人豊洲市場協会

会長 伊藤裕康

 

 昨年十月十一日の開場から早いもので、一年を迎えることとなりました。これもひとえに、多くの出荷者の皆様、買い受け人の皆様、農林水産省、東京都、江東区、そして豊洲市場の各業会など多くの方々からいただいたご支援、ご協力の賜物であり、心より感謝を申し上げます。

 

 さて、この一年は、各業会が、それぞれの専門的な仕事を豊洲市場という新しい舞台にどうマッチングさせるかという取り組みと、この豊洲市場で新たにチャレンジしようという取り組みが同時になされてきた、大変忙しい一年だったと振り返っております。また、築地時代とは違った、新たな市場の「ルール」も徐々に生まれ始めております。

 

 こうした中で、私は昨年の開場式典の際に、「豊洲市場を世界に冠たる、栄える市場として維持発展させて行く」という方向性を打ち出しました。それから一年を経過した今、豊洲市場としての具体的な全体ビジョンを定め、新たなステージへとステップアップさせたいと考えております。

 

 私どもが目指すビジョンを具体的に申し上げますと、「地元に愛される」「都民に信頼される」「世界に翔(はばた)く」の三つでございます。豊洲市場は言うまでもなく、江東区民、豊洲地区の皆様と同じ生活圏のなかで事業を行わせていただいております。また、都民の台所である豊洲市場は安全で安心できる食品の供給者として「都民に信頼される」市場でなければなりません。地域の皆様に愛され、都民の皆様の信頼を得たうえで「世界に翔(はばた)く」市場を目指します。豊洲市場で働くどなたにとってもわかりやすい、共通の御旗として掲げ、業会が一丸となって、これらに機敏に対応できるような風土にしたいと考えております。

 

 さらに、今月からは豊洲発の情報発信にも取り組んでまいります。市場をご利用いただいている多くの皆様、及び消費者の皆様に豊洲市場ならではの、入荷状況や相場、産地情報、魚介類の特徴、料理法などを正確かつ分かりやすい形で発信してまいります。まず、水産からスタートし、のちに青果の情報を加え、生鮮食料品の普及に従来以上に力を注いでまいります。

 

 今、われわれを取り巻く環境は猛スピードで変化しております。ITやIOTを使った技術革新で省エネ、省力化が進んでおり、様々なものがデータ化、自動化、デジタル化されております。これに伴い、決済、物流などあらゆるものが変化し、この変化に対応できないものは事業の継承ができなくなる可能性があります。

 

 こうした環境変化に加え、目の前には解決しなければならない課題も山積しております。

 

 今月から消費税率が十パーセントに変更されたばかりであり、年末に向けて消費動向が気になります。来年六月の改正卸売市場法の施行に向けた市場条例の改定作業が終盤に来ております。また、食品安全面では、HACCP義務化への対応、昨年改正された漁業法に伴い、水産資源の持続的利用に向けた資源管理の強化が水産物の供給にどう影響するかも気になるところです。これらに対しては、豊洲市場協会の会員各位のご協力を得ながら、対応に取り組んでまいります。

 

 最後になりますが農林水産省、東京都、江東区及び市場協会会員各位におかれましては、引き続きご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。