豊洲市場協会は12月15日、小池百合子都知事に対し、ウィズコロナ・ポストコロナ社会を見据えた対応、豊洲市場の魅力発信と市場機能の強化について、要望を行いました。要望は昨年に続き実施しましたが、新型コロナウイルス感染症予防の観点から、伊藤裕康会長及び各街区を代表し、網野裕美副会長、早山豊副会長、鈴木敏行副会長が出席。伊藤会長が要望趣旨を説明しました。

 

【要望の主な内容は以下の通り】

 豊洲市場は、「地元に愛される、都民に信頼される、世界に羽ばたく」の三点を目指して運営を行っており、開場後2年が経過しました。
 新たな未来に向けて着実に歩みを進めていた時に、新型コロナウィルス感染症の影響により、経済的に豊洲市場も大きな影響を受けました。また、感染拡大が波形状に連続する中、豊洲市場で働く仲間にも感染者が発生し、ご心配をおかけした時期もありましたが、市場協会あげての対策が幸いにも功を奏し、現在は落ち着きを取り戻しつつある状況です。
 新型コロナウィルス感染症は、「新しい日常」という形で人々の行動様式に変化をもたらしました。これに伴い、生鮮食料品流通を取り巻く環境も大きく変化しております。
 豊洲市場協会は、改正卸売市場法やHACCP制度化、漁業法に基づく水産資源管理の強化などの流通環境等の変化に加え、ポストコロナにおける社会構造の転換を見据えた対応を、川上である産地や川下である実需者・消費者と一体となり、流通の中核である中央卸売市場として、東京都と連携を図りながら、しっかりと対応していく所存であります。
 開設者である東京都におかれましては、是非とも豊洲市場の役割と実状についてご理解を賜るとともに、豊洲市場の更なる発展に向け一層のご支援をいただけるよう、お願い申し上げます。
1 ウィズコロナ・ポストコロナ社会を見据えた対応
(1)感染防止対策の更なる徹底と市場業者の経営の強靭化
   今般の新型コロナウィルス感染症は、社会全体にとって脅威であることは間違いありません。市場内においても感染者が発生したこともあり、小規模事業者のなかには、事業継続が危ぶまれる者もおります。また、取引面では、影響が軽微であった者もいれば、甚大な影響を被り、いまだ回復できない者もおります。
 様々な専門家が一体となり、単なる足し算以上の価値を創出している豊洲市場の特徴を踏まえると、生鮮食料品の基幹的なインフラとしての役割を継続して果たしていくためには、高いレベルでの感染防止対策と個々の事業者の経営基盤の強化を図ることが必要です。
   東京都におかれましては、市場運営を継続していくための感染防止対策に対して、引き続きご支援をお願いします。また、意欲ある事業者や経営に不安を持つ事業者など、個々の事業者の状況に合わせた積極的な経営支援をお願いします。
(2)社会構造の変化への迅速かつ柔軟な対応
  新型コロナウィルスがもたらした影響は、負の側面ばかりではありません。「新しい日常」という形で現れた人々の行動様式の変化は、私どもの仕事にも変化を迫るものであります。本年6月に改正卸売市場条例が施行され、商流・物流・情報流に関する新たな試みを検討していた私たちにとっては、新型コロナウィルス感染症がもたらした社会構造の変化によって、取組をさらに加速していく必要があります。
  リアルのよさを残しつつデジタル化を進め、デジタル化した情報を活用して新たな価値を提供するなど、これまでとは異なる好循環を創出していく必要があります。
  市場全体でみればデジタル化が進んでいるとは言えない状況ですが、一歩ずつ着実に、新たなせりのあり方や物流の見直しなど、デジタルシフトを図っていく所存です。東京都におかれましては、デジタル化の推進に向けた取組に対するご支援をお願いします。
2 豊洲市場の魅力発信と市場機能の強化
(1)発信力の強化
豊洲市場は食材の流通拠点であると同時に、情報の発信拠点としての機能が求められています。新型コロナウィルス感染症の影響により海外や遠方からの来場者が減少する中、それでも来場される方も多くいます。そこで、リアルとデジタルの両分野において、情報発信の取組を加速させていく必要があります。特に来年の東京2020大会を見据え、「TOYOSU」ブランドの知名度向上を図ることが重要です。市場関係者が主体となって、本物の「食文化」を伝えていくための取組に対し、ご支援を賜るとともに、東京都の積極的な取組の推進をお願いいたします。
(2)食育への取組
   今後も卸売市場の役割を担っていくためには、消費量増加に向けた取組は重要であります。また、生鮮食料品を毎日取り扱っている卸売市場だからこそ、日常生活に欠かすことができない「食」の重要性について発信する責務があると認識しております。
   このため、東京都においても、更なる食育の実施や食育の普及についてご尽力いただくとともに、とりわけ次世代を担う子どもはもちろん、様々な世代に対する食育事業の強化等のご支援をお願いいたします。
(3)利便性向上に向けた取組
   卸売市場における取引の特性を踏まえると、デジタル活用を最大限進めたとしても、必ずリアルな場面が必要となります。このため、市場運営に際しては、ご利用いただく方々や市場で働く従業員の利便性向上に向け、不断の
努力が必要となります。場外からのアクセスに加え、場内の動線や駐車場などの設備等について、引き続き利用者等の意見を聞きながら、ご対応を願います。