豊洲市場を3月10日、岸田文雄総理、金子原二郎農水大臣が訪問し、豊洲市場協会の伊藤裕康会長、早山豊副会長、増山春行副会長ら市場関係者、市場外の食品関連事業者と意見交換しました。岸田総理らは水産仲卸売場を視察後、関連物販店舗に立ち寄りノリをスマホ決済で購入。意見交換会は「車座」として総理を取り囲む形で行われ、新型コロナの影響、ウクライナ情勢の影響、今後の不安事項などについて取り上げました。※出席の立場は市場協会正副会長ではなく、各社代表・全国団体の長など


《岸田総理》

 岸田総理は冒頭、「新型コロナの影響が長引き、多くの企業が厳しい環境の中で努力を続けている。国民の皆様に安定して食料を供給いただいていることに、改めて敬意と感謝を申し上げたい。さらにウクライナ情勢を巡り、原材料が高騰するほか、ロシアからの食材輸入に影響が出るなど新たな課題も浮かび上がってくる状況。こうした困難を乗り越えるために、それぞれの立場でどのように感じられているか、今後をどのように考えているか、忌憚のないご意見を聞かせていただき、できるだけ生活や経済に影響が出ないよう、全力でやるべき対策をご用意させていただきたい」と車座の目的を説明しました。


《伊藤会長》

 伊藤会長は新型コロナワクチンの職域接種など感染対策を行いながら、食品流通を支えてきたことを紹介。「われわれ市場は、決して流通を止めてはいけないというのが使命だと思っております。コロナにより川下の需要が失われたとしても、産地から出荷された商品をしっかりと消費者に届けていく必要がございます。一昨年に新型コロナウイルスが確認されて以来、徹底した感染予防対策を行い、職域接種の実現などを通じて、休業することなく営業を継続しました」と報告しました。ウクライナ情勢に関連しては、「ロシアからのサケ、ウニなどの品不足の問題もございますが、現在はノルウェーから空輸してくるサケがロシアの上空を飛べないということで大変困っている」と紹介。今後については、「我々は消費者のニーズにしっかり応えて信頼を得ていくことが大事です。消費者にしっかりと新鮮な食材を届けることができるように、小売店や飲食店の皆さんのニーズに応えるために、設備投資したり、新たな仕組みづくりに取り組んだり、それぞれの業者が販路の多角化に取り組んでいます。これからも卸売市場の公的な役割を果たしていくために、環境の変化にしっかりと、柔軟に対応していきたいと思っています」と話しました。


《早山副会長》

  早山副会長は「和食文化は世界遺産にも登録されている貴重な文化ですが、職人の技もさることながら、下支えする水産仲卸の目利きがあって初めて完成するものです。この2年間、コロナ対応の中で市場運営でやるべきことをしっかりやってきたという誇りがあります。しかし、頑張ってきましたが、ここにきて疲労困憊の状況です」とコロナ禍の厳しい状況を説明。ウクライナ情勢に関しては、「大きな影響は出ていないが、心配なのは、ロシア産の水産物を納品しないでくれといった依頼が来ていること。末端でもロシア産に対する拒否反応が出始めている」と話しました。このほか、東卸組合が今年70周年を迎えること、3月11日には毎年黙祷を捧げていることを紹介し、「産地と協力して市場を盛り上げていきたい」としました。


《増山副会長》

 増山副会長は「我々のお客さまは小売店やスーパーで買っている一般の家庭の主婦です。彼女達は値上げに対してすごく敏感。これまでも何度も値上げはあるんですが、今回はちょっと規模が大きい。そうすると少しでも安いものを買いたい、買い控えをしようというふうになってきます。単純に小麦が高くなるといったことだけではなく、一般の青果物、魚介類まで影響が出る可能性があります。また、スーパーのチラシを見ると30年前と同じ価格なんです。なんとかこれをリセットして、日本の物流の根本から見直す時期に来ているのではないでしょうか。この昨今は苦しい思いばかりしています」と話しました。


〜岸田総理の総括〜

 岸田総理は、「この2年間、様々な対策を用意し、そして取り組みを続けているわけですが、ウクライナ情勢の変化を受けて、まずは全国に相談窓口を展開し、今日お伺いした皆様方のような声をしっかり吸収しなければいけません。ぜひ、そうして声を踏まえて、長期化に対する不安、価格転嫁に対する不安にどう応えるのか、至急、政策を準備しなければと感じています。食品関連産業の皆様方の今日までのご努力のおかげで、私たち国民は豊かな食生活を本日まで維持させていただいていることの重みを噛み締めながら、この状況を維持するにはどうしたら良いか、影響を少なくするにはどうしたらいいのか、政府として取り組みを進めていきたい。先行きが不透明であり、ウクライナ情勢も今後どういった方向に行くのか、予断を許さない状況ですので、皆様の声に機動的に政府として対応することが大事だと肝に銘じながら努力をしていきたいと思います」と車座を締めました。


〜車座を終えての総理会見〜

 岸田総理は車座の終了後、マグロの模型前で会見を行いました。「今日は様々な声を聞かせていただきました。新型コロナによる影響とウクライナ情勢による影響とのダブルパンチに見舞われご苦労されている。お話を聞かせていただき感じたのは、様々なところに影響が出ているということ。よりきめ細かな対応が必要であるということを感じました。食品関連産業の皆様に、再び元気を出してもらうためにも、観光や飲食など広く国民の皆様の生活を元に戻していくことが大事です。コロナ対策についても引き続き、ワクチン接種などをしっかりと進めていかなければならないということが重要なのは間違いない」と話しました。


《視察の模様》

岸田総理、金子農水相が水産仲卸店舗を視察
スマホ決済する岸田総理
市場内各所で言葉を交わす岸田総理

※撮影:東京魚市場卸協同組合広報・豊洲市場協会広報
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